二回続けて、途中でやめた――原因が分かるまで、僕は自分を疑っていた

付き合って一年ほど経った頃のことです。
彼女が、挿入のときだけ急に痛がるようになりました。

そこまではいつも通りでした。痛みもないし、気持ちよさもいつも通り。
なのに、挿入した瞬間だけ激痛が走る。

結局それは体調によるもので、婦人科にかかって治りました。
ただ、原因が分かるまでの一週間、僕がいちばん疑っていたのは、自分のやり方でした。

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同じところで、二度

一回目は、いつもの週末でした。

そこまでは何も変わったところがなくて、じゃあ、というところで彼女が痛いと言いました。
我慢できる程度ではなさそうだったので、そこでやめました。

二人とも心当たりがありません。
たまたまかな、中が少し傷ついたのかな、体調かな。
そんなふうに話して、一週間ほど様子を見ることにしました。

翌週。
今度は始める前に確認しました。お腹は痛くないか、違和感はないか。
問題なし。そこまでも、痛みなし。

そして、また同じところで、同じ痛みが出ました。

ここで二人とも、これは普通じゃない、と思いました。
一回だけなら偶然で片付けられます。
でも確認を尽くしたうえで、同じ条件で、同じ結果になった。
この二回目のことは、あとでもう一度出てきます。

彼女は二回とも、自分から言ってくれました。
言ってくれてありがとう、と返して、その日はそこで終わりにしました。
痛いと言えること、それを受け止めることについては、別の記事にまとめて書きました。

どちらの日も、お互い少し悲しい気持ちにはなりました。
なんで痛くなっちゃったんだろうね。まあ、そういうこともあるよね。
そんな話をして、あとはいつも終わったあとにするような、たわいもない話をして眠りました。
中断した日も、終わり方はいつもと同じでした。

僕は普段から、いつもできているから今日も大丈夫、とは考えないようにしています。
痛くない、大丈夫、としつこいくらい聞く。自分でもしつこいと思います。
でもこのときは、聞いても分からないことが起きていました。

原因が分からない一週間、僕が疑っていたのは自分だった

正直に書きます。
このとき僕の頭に最初に浮かんだのは、病気の可能性ではありませんでした。

自分が何かしてしまったんじゃないか、でした。

指で引っかいてしまったんじゃないか。
きちんと準備をしないまま入れて、中を傷つけてしまったんじゃないか。
あるいは、僕のサイズとの相性が、急に合わなくなってしまったんじゃないか。

そう考えるのは、たぶん自然なことだと思います。
セックスのときにメインで動いているのは僕です。
何かが起きたなら、動いている側の手元をまず疑うのが筋だろう、と。

疑いの、重さの順番 いちばん強く疑ったのは、自分のやり方だった 1 自分のやり方 引っかいたのでは 準備が足りなかったのでは 2 二人の相性 急に合わなくなった のではないか 3 体のこと 候補には挙がっていたが 本気にしていなかった 動いている側が自分をまず疑うのは、たぶん自然なことです。 ただ、答えが自分の外にあることもある。

ひとつ、自分でも情けないと思いながら認めたことがあります。
僕の感覚では、前戯が足りなかったつもりはありませんでした。
でも、足りていたかどうかは、正直、男の側からは分からないんですよね。
準備の話は普段から気をつけているつもりでしたが、つもりでしかない。
だから「大丈夫だったはず」と自分に言い聞かせることが、そもそもできませんでした。

彼女に言った。謝るためじゃなくて、直すために

この不安を、僕は一人で抱えませんでした。
彼女に、そのまま話しました。

引っかいたのかもしれない。
準備が足りなかったのかもしれない。
もし僕に原因があるなら、それは直さないといけないから、教えてほしい、と。

それから、ついでのようにこうも言いました。
もし不満に思っていることがあるなら、この機会に言ってほしい。

全部言え、という感じではありません。
ただ、痛みという分かりやすい形で何かが表に出てきたときって、他のことも一緒に言いやすいんじゃないかと思ったんです。
言いそびれていた小さなことが、あるかもしれない。

返ってきたのは、こうでした。

不満なことなんて全然ないよ。
いつも大事にしてくれてるの、伝わってるよ。
優しくしてくれるし、準備もちゃんとしてくれてる。

僕が欲しかったのは直すべきところだったので、その意味では答えになっていません。
それでも、我慢して黙っていることはないらしい、とは分かりました。

準備もちゃんとしてくれてる、と言われたことは、正直、少し救われました。
それが足りていたのかどうかは、あいかわらず分からないままでしたが。

ここで大事なのは、話してくれるかどうかは、僕には決められないということです。

僕にできるのは聞くことまでで、答えるかどうかは彼女の側にあります。
そしてそれは、そのときの聞き方というより、それまでに積み上げてきた信頼の分だけ返ってくるものだと思っています。
だからこの一週間にできたことは、実はほとんどありませんでした。
できることは、それまでに終わっていた。
(普段から性の話をしておくことの意味は、こういうところに出るんだと思います。)

原因は、僕らのやり方ではなかった

数日後、彼女のほうからも、体に気になる変化があると話がありました。
ちょうど同じ頃、前に婦人科でみてもらったときの書類が届いて、そこに気になる記載がありました。
つまり痛みが出るより前の時点で、すでに始まっていたということです。

婦人科にかかって、診断がつきました。
性感染症ではありませんでした。
彼女の場合は、疲れがたまっていたことが背景にある、という説明でした。
その時期、忙しさが続いていたんです。

二人とも、心底ほっとしました。

ほっとできた理由はもうひとつあって、僕らは付き合いはじめた頃に、二人で検査を受けていたんです。
そのときは「これからのために、やっておこう」くらいの気持ちでした。

念のため書いておくと、一年前の検査が今を保証するわけではありません。
検査はその時点の証明でしかなくて、それはリンク先の記事にも書いた通りです。
それでも、お互いを疑う時間を作らずに済んだのは確かでした。
始まりに済ませておいたことが、不安な一週間から、余計な想像をひとつ減らしてくれたわけです。

そしてもうひとつ。
二回目に、確認を尽くしてから臨んで、それでも同じ結果になったこと。
あの回があったから、自分たちのやり方の問題ではないと二人で結論できました。
一回で終わっていたら、僕はもっと長く自分を疑っていたと思います。

ただ、いま振り返って人にすすめるかというと、すすめません。
確かめるために痛い思いをする必要はどこにもなくて、一回目の時点で病院に行っていればよかったと思います。
結果的に自分たちを疑わずに済んだ、というだけの話です。

治っているのか分からなかった、数日間

治療が始まってから、ひとつ不安なことがありました。

処方された薬について、これで合っているんだろうか、と思わせることが起きたんです。
効いていないんじゃないか。
せっかく行ったのに、また振り出しなんじゃないか。

このとき彼女は、自己判断せずに病院に電話して聞きました。
僕も横にいて、一緒に聞いていました。
僕らのケースについて返ってきた答えは、こうでした。
心配しているようなことにはなっていないから、大丈夫。
それでも治らないようなら、また受診してください。

それを聞いて、二人とも安心できました。

書いていて思うのは、この電話がいちばん実用的な一手だったということです。
調べれば何かしら出てくる時代ですが、自分たちのケースに当てはまるかどうかは分かりません。
分からないことを分かる人に聞く。
それだけのことなのに、案外やらずに不安なまま数日過ごしてしまう。

治るまでは、中途半端に試さない

治るまでの期間、僕らはセックスをしませんでした。
きれいに治るまでは、しないでおこうね、と。

理由は、はっきりしていました。

治るまでの、二つの道 体だけの問題ではなく、記憶の問題でもある 無理に試してみる 痛い思いをする またできなかった、が残る 次に、怖さが足される 治っても、記憶のほうが残る気がした きっぱり休む 触れ合いのほうは続ける 治ってから、戻る できた、で戻れる 同じ休みでも、着地が変わる 僕らにとって休みは、我慢ではなく、 失敗の記憶を作らないための時間でした。

無理にやっても、たぶんいいことがありません。
痛い思いをさせてしまうし、それが積み重なれば、行為そのものが嫌になったり、怖くなったりするかもしれない。
うまくいかなくても、「やっぱりできなかった」という体験が一つ増えるだけです。

体は治っても、その記憶は残ります。
だから中途半端に試さない。きっぱり休む。
そう決めたほうが、結果的に早く元に戻れると思いました。

その間、僕から「溜まってるから」と言って、手や口でしてもらうようなことは求めませんでした。
これは今回に限った話ではなくて、生理の期間も同じです。

再開の夜、不安だったのは僕もだった

しばらく経つと、お互いに、またしたいねという気持ちが戻ってきます。

だから再開も、どちらかが誘ったというより、二人で話して決めました。
そろそろ治ってきたかな。
そろそろ、してみる?
そんな確認をしてから、その日を迎えました。

正直に言うと、すごく不安でした。
また痛みが出たらどうしよう、と。

そしてそれは、僕だけではありませんでした。
痛かったのは彼女の側なのに、怖がっていたのは二人ともだった。
痛みは片方に起きた出来事なのに、不安のほうは二人のものになっていたんです。

だからその日は、いつも以上にゆっくり準備をしました。
時間をかけて、確かめながら。

結果、痛みは出ませんでした。
以前と同じようにできて、二人とも、以前と同じように満足できた。

そこで初めて、ちゃんと治ったんだと分かりました。
もちろん、体のことを判断するのは僕らではありません。
そのうえで僕らにとっては、いつも通りに戻れたことが、いちばんの実感でした。

分からないときに、ひとりで抱えないこと

付き合って一年ほど。
慣れてきたつもりでいた頃に、急に痛みが出て、原因が分からないまま不安になる。
そういうことが、普通に起きました。

一年もいれば、相手の体のことは分かってきたつもりでいました。
でも分かっていたのは、いつも通りのときの彼女だけだったな、と思います。

彼女が痛みを言えたこと。
僕が「僕のせいかもしれない」と言えたこと。
薬のことを、分からないまま抱えずに聞けたこと。
再開するときに、お互いの不安をそのまま口に出せたこと。

ぜんぶ、同じひとつのことの現れでした。

最後にひとつだけ。
原因の分からない痛みが続くなら、自己判断せずに婦人科へ行ってください。
僕らも、そうしてよかったと思っています。

この記事を書いた人

「女の子にひどいことなんてできない」——そう思っていた僕が、彼女とSM・D/sを学んできた記録。合意と安全のことを、等身大で綴っています。

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