このサイトでは珍しく、今日は「やり方」を一切書きません。
書くのは、その手前にある前提の話だけです。
唾液、精液、愛液。体液が深く関わる行為は、SMやD/sの文脈に限らず、親密さの表現としてカップルの間に自然に現れます。
僕らも、関係が深まる中でそういう領域に踏み込んだことがあります。
ただ、この種の行為をネットで調べると、興奮を煽る情報ばかりが出てきて、一番先に書かれるべきことが書かれていない。
だからこの記事を書いています。
体液が関わるプレイは、3つの前提が揃って初めて「ふたりの選択肢」になります。
体液プレイとは、何を指すのか
はっきりした定義がある言葉ではありません。
ここでは、相手の体液が口や粘膜に触れる行為をまとめてそう呼んでいます。
深いキスで唾液を交わすことから口で受け止めて飲むことまで、幅はかなり広い。
幅が広いぶん、「どこからが体液プレイか」を線で引くことにはあまり意味がありません。
大事なのは、体液が粘膜に触れる行為には、共通して同じリスクがついてくるということです。
そのリスクへの備えは行為の種類ごとに要るものではなく、ふたりの関係の側で一度にやってしまえる。
それがこの記事でいう「前提」で、サイト全体の安全の地図でも同じ名前の層に置いています。
検査の結果は、今夜の気分では変わりませんから。
前提①:ふたりとも検査を受けていること
身も蓋もない事実から始めます。体液の交換は、性感染症の主要な感染経路です。
クラミジア、淋菌、梅毒、HIV、ヘルペス。多くの性感染症は、粘膜や皮膚の接触、体液を通してうつります。
そして厄介なことに、感染していても無症状のことが珍しくない。
本人に自覚も悪気もないまま、パートナーにうつります。
だから「お互い症状ないし大丈夫」は、安全確認になっていません。
確認の方法はひとつだけ、検査です。
どこで受けるか
- 保健所:HIVや梅毒などの検査を無料・匿名で受けられます。調べられる項目や予約の要否は自治体によって違うので、住んでいる地域の保健所のページで確かめてください
- クリニック(性感染症内科・泌尿器科・婦人科):項目を広く選べます。症状がなければ自費になることが多いです
- 郵送検査キット:自宅で採取して送る方法です。対面が気まずい、ふたり一緒に受けたい、というときに向いています(僕らはこれにしました。そのときの話は「避妊を、ふたりで選び直した話」に書いています)
何を調べるか
基本になるのは、クラミジア、淋菌、梅毒、HIVの4つです。
郵送キットやクリニックによっては、ほかの項目を足せることもあります。
体液プレイの前提として、ここでいちばん知っておいてほしいのは、喉の検査は別だということです。
口が関わる行為では、クラミジアや淋菌が喉に感染することがあります。
しかも喉の感染は、症状がほとんど出ないことが多い。
性器の検査だけでは、喉の感染は分かりません。
口を使う行為が前提に入るなら、喉の検査(うがい液を採るものが一般的です)が入っている検査を選んでください。
喉の検査は保健所では扱っていないことが多いので、クリニックか、喉の項目がある郵送キットで受けることになります。
(部位が関係するのはクラミジアと淋菌です。梅毒とHIVは血液で調べるので、部位は関係ありません。アナルが関わる場合も、喉と同じく性器の検査とは別になります)
もうひとつ、B型肝炎も性行為でうつることがあり、基本の4項目には入っていません。
保健所によっては無料で調べられます。ワクチンで予防できる病気でもあるので、気になる人は医療機関で相談してみてください。
いつ受けるか
検査には、感染してから検出できるようになるまでの空白期間(ウィンドウ期)があります。
クラミジアや淋菌は比較的短く(それでも保健所の案内では、1ヶ月ほど空けることを目安にしていることが多いです)、梅毒やHIVは数週間から3ヶ月ほどかかります。
つまり新しい関係では、最後にリスクのあった時期から期間をおいて受ける(または期間をおいて再検査する)ことで、初めて結果が確定します。
受ける前に、検査を受ける先の案内で「いつから受けられるか」を確かめておくと確実です。
また、ヘルペスのように検査で完全には確認しきれないものもあります。
検査は「リスクを大きく減らす手段」であって、ゼロの証明ではありません。
それでも、受けると受けないでは安心の桁が違います。
陽性だったら
まず、郵送キットや即日検査で陽性(判定保留)と出た場合は、まだ確定ではありません。医療機関で確認の検査を受けてください。
そして陽性が確定しても、それは誰かを責める材料ではありません。
無症状のまま気づかずに持っていた、というのはよくあることです。
やることは、医療機関を受診して治療すること。
そして、ふたり一緒に検査と治療を受けることです。
片方だけ治しても、もう片方が持っていればまたうつし合ってしまいます。
クラミジアや淋菌、梅毒などは治療で治せます。治療が終わって、医師に治ったことを確かめてもらうまでは、体液が関わる行為は控えます。
HIVのように治療を続けていく病気の場合は、その後のことも含めて医師に相談してください。
前提②:互いに唯一のパートナーであること
検査は「その時点」の証明でしかありません。
検査のあとに第三者との接触があれば、安全はリセットされます。
つまり体液が関わるプレイの安全は、「検査済み」×「お互いがお互いだけ」のかけ算で初めて成立します。
どちらが欠けても成り立ちません。
不特定の相手との行為や、関係の外が見えない相手との行為では、このかけ算が組めない。だからこのサイトでは、その文脈でのこの種のプレイをおすすめしません。
煽る情報が省略しているのは、まさにここです。
このかけ算を続けるために、ひとつだけ約束しておくといいことがあります。
もし関係の外で何かがあったら、隠さずに言うこと。
言いにくい話ですが、黙っていれば、相手は知らないまま前提が崩れた状態で体を預けることになります。
関係をどうするかは別の話として、少なくとも体の安全は、また検査からやり直せます。
見方を変えれば、これは長く続くふたりだけが使える、関係の特権みたいなものです。
積み上げてきた信頼と誠実さが、そのまま遊びの自由度になる。
前提③:境界の合意があること
安全がクリアでも、もうひとつ前提があります。それを心地よいと感じるかは、完全に個人の自由だということです。
体液に関する感じ方は、人によって本当に幅があります。
深い親密さの象徴と感じる人もいれば、生理的にどうしても受け付けない人もいる。どちらも正常で、どちらも尊重されるべき感覚です。
愛情の証明として要求するのは筋違いですし、「嫌」と言われたらそれで終わり、交渉の余地なし。
この種の行為はYes・No・MaybeのリストでいうNoに入れる人が多い項目で、それは何もおかしくありません。
そしてもうひとつ。
避妊の方針(コンドームを使う・使わないを含めて)は、体液の話と地続きです。ふたりで明示的に話して決めた合意があること。
なんとなくの既成事実ではなく、です。
この話がまだなら、まずそこからです。性の話をオープンにできる関係を作るのが、すべての出発点になります。
前提が揃ったあとも、気をつけたいこと
3つの前提が揃えば、それで全部おしまい、というわけでもありません。
検査では防ぎきれない、日々の体調の話が残ります。
- 口のまわりにヘルペス(口唇ヘルペス)が出ているときは、キスや口を使う行為を控えます。口から性器へうつることもあります
- 口の中に傷があるとき、歯ぐきから血が出ているとき、歯の治療の直後などは、粘膜が守られていない状態です。その日は避けたほうが安心です。直前の歯みがきやフロスも小さな傷を作るので、少し時間を空けます
- 性感染症とは限らないトラブルもあります。検査を済ませたふたりにも、体調しだいで痛みやかゆみが出ることはあります。いつもと違うと感じたら、原因を決めつけずに受診してください
どれも、どちらかが「今日はちょっと」と言えれば済む話です。
前提が揃っているふたりほど、この一言が言いやすいはずです。
僕らの場合:最初の検査が、一年後に効いた
僕らは付き合いはじめた頃に、ふたりで検査を受けました。
疑っているみたいで気まずいかな、と少しは思いましたが、「関係を大事にしたいから受けよう」と言えば、それはそのまま信頼の表明になりました。
それから一年ほど経ったころ、彼女が痛いと言って、二回続けて途中でやめたことがあります。
原因が分からないあいだ、僕はずっと自分のやり方を疑っていました(その一週間のことは「二回続けて、途中でやめた」に書いています)。
受診して分かった原因は、性感染症ではありませんでした。
そのときほっとできた理由のひとつが、最初の検査だったんです。
あのとき検査を受けて、それからずっとお互いだけだった。
前提②のかけ算が一年途切れずに続いていたから、「少なくともその心配はしなくていい」と思えました。
検査を受けた日には、こんな形で効いてくるとは思っていませんでした。
前提は、何も起きていないときには目立ちません。
何かが起きたときに、はじめて足元を支えてくれるものなんだと思います。
まとめ――興奮より先に、前提を
- 体液が関わるプレイの前提は3つ:①ふたりとも検査済み ②互いに唯一のパートナー ③境界と避妊の明示的な合意
- 「症状がないから大丈夫」は安全確認ではない。確認手段は検査だけ(保健所ならHIV・梅毒などを無料・匿名で)。口を使うなら喉の検査は別に要る(クリニックか郵送キットで)
- ウィンドウ期があるため、リスクから期間をおいて受けて初めて確定。陽性なら医療機関で確かめて、ふたり一緒に治療する
- 検査は疑いではなく、信頼の表明。関係の早い段階で受けておくと、その後の自由度が変わる
- 前提が揃ったあとも、口唇ヘルペスや口の傷がある日は控える
前提が揃っているふたりにとって、この領域は深い親密さの表現になりえます。
揃っていないなら、まだその時ではない。それだけの話です。
焦る理由は、どこにもありません。

