うちには、こういう瞬間があります。
行為の途中で、彼女が「痛い」「この体位は無理」「今日は別のほうがいい」と言ってくる。
今日は、その一言の話です。
こういう痛みは、性交痛と呼ばれます。
原因や治療のことは、婦人科の先生や医療の情報にゆずります。僕は専門家ではないので、ここで診断めいたことは書きません。
この記事で書きたいのは、そのもう一歩手前です。
「痛い」と言えるかどうか。そして、言われた側がそれをどう受け止めるか。
調べても、あまり出てこないのはたぶんこっちのほうだと思うので。
まず、実際に起きること
痛みが出る場面は、だいたい決まっています。
先に、その具体から書きます。
① 濡れ不足・乾きによる、こすれる痛み
前戯が足りなかった日、乗りにくい日、体位を変えたり休憩を挟んで乾いてしまった時。
摩擦が大きくなって、入り口がヒリつく。
こういう時は、潤滑ジェルを足したり、口で濡らしたり、もう一度前戯に戻したりします。
あわてず、いったん仕切り直す。それだけで、たいてい変わります。
② 体位・角度による痛み
挿入の角度が変わると、入り口が引っ張られたり、奥に当たったりして痛むことがあります。
- 正常位で上体を起こすと、角度が変わる → 密着した体勢に戻すか、少しずつ慣らす
- 後ろからのとき、入り口に負担がかかりやすい → 浅くする・角度を変える、それでも無理なら「今日はやめようね」になる日もある
角度の問題なら、当たらない体位に変える・浅くする・ゆっくりにするで和らぐことが多いです。
平気な日もあれば、今日はどうしても無理という日もある。そこが不思議なところです。
これは次の話につながります。
「今日は濡れにくい」は、異常でも、あなたのせいでもない
ひとつ、強めに言いたいことがあります。
濡れやすさや、受け入れやすさは、日によって本当に変わります。
ホルモンの周期や疲れ、ストレス。そういうもので変わる、ごく普通のことです。
しかも、「気持ちは乗っているのに、身体がついてこない」ということも起こります。
気持ちと身体の反応は、必ずしも一致しないと知られています。
(逆もそうで、身体が濡れているからといって、それが「してもいい」のサインとは限りません。
身体の反応と、本人の「うん」は別ものです。)
だから、「濡れない=魅力を感じていない」と落ち込むのは、たいてい誤解です。
責め合う必要はありません。「今日はそういう日だね」でいい。
ただし、ここは「我慢」じゃなく「受診」――性交痛は、相談していい
安心の話だけして終わるのは不誠実なので、線を引いておきます。
次のような痛みは、気合いで乗り越えるものじゃなくて、婦人科に相談するサインです。
- 毎回痛む/だんだんひどくなる
- 出血をともなう
- 行為のあとも、行為以外(排尿時や日常)でも痛い
- 灼熱感・かゆみ・においの変化など、感染を思わせるとき
このサイトは診断はしません。
でも「よくあることだから」と我慢し続けるのは、身体からの別のサインを見逃すことになります。
痛みは、根性で消すものではなく、情報です。
それと、ひとつ。
性交痛で婦人科に行くのは、恥ずかしいことでも、大げさなことでもありません。
医師にとっては珍しい相談ではないし、伝え方だって「行為のときに、ここが痛みます」で十分に通じます。
迷っているなら、行ったほうがいい。付き添う側にできるのは「行ってきていいよ」と背中を押すことくらいですが、それでもだいぶ違うと思います。
ここからが本題――その一言が、いちばん嬉しい
長くなりましたが、本当に書きたかったのは、ここからです。
彼女が「痛い」「この体位は無理」「今日は別がいい」と、素直に教えてくれること。
僕は、それがいちばん嬉しい。
痛みやサイズの話がしたいんじゃないんです。
こういうことを言い合える関係ができていること。それ自体が、嬉しい。
「NO」を、どう受け取るか
ここからは、受け止める側の話です。たぶん、この記事の心臓部です。
彼女が痛みやNOを伝えてきたとき、怒ったり、不機嫌になったりする人もいると思います。
でも、それをやると、相手は学んでしまいます。
「もう言わないでおこう。我慢しよう」と。
受け止める側の反応が、相手が「次も正直でいられるか」を決めてしまうんです。
だから僕は、こう言うようにしています。
「勇気を出して言ってくれて、ありがとう」「ちゃんと言えて、偉いね」と。
彼女は褒められると嬉しい人なので(褒めて支配するに書いたとおりです)、中断は、むしろ褒めるチャンスだと思っています。
その体位ができなくても、ほかにできることはいくらでもある。
仮に今日が中断になったとしても、僕が褒めたいのは、その伝えてくれた勇気のほうです。
我慢させてまで、したくない。
嫌がること・したくないことを、無理強いしてまで続けたくない。
これは、声が出せない時のセーフワードで書いた「赤と言えば止まる」と、まったく同じことだと思っています。
そして、断られても大丈夫な関係の話とも、地続きです。
潤滑のことだけ、実務メモ
ひとつだけ実務を。
潤滑ジェルは、「濡れない問題の万能薬」ではありません。
こすれる痛みには効きますが、奥の痛みや、さっき書いた受診ラインの痛みは、ジェルでは消えません。
ゼリーを使っても痛いなら、それはもう潤滑の問題じゃない、ということです。
足りないものを足しても消えない痛みは、たぶん別のところに原因がある。そこから先は、僕らの工夫でどうにかする範囲じゃありません。
選ぶなら水溶性を。油性(ベビーオイルなど)は、コンドームを傷めて破れの原因になります。
このあたりは潤滑ジェルとローションの記事に詳しく書きました。
そして、激しかった日や痛みが出た日ほど、終わったあとのケアを丁寧に。
まとめ
- 痛みは「我慢して続けるもの」じゃなく、止めて調整する合図
- 濡れにくい日は正常。「魅力がない」の誤解はしない。ただし反復・出血・感染のサインは受診
- いちばん大事なのは、「痛い・無理」を言える関係と、それを「ありがとう」で受け止める側
- NOに怒らない。むしろ、伝えてくれた勇気を褒める
「痛い」と言える人と、「ありがとう」と返せる人。
そのふたりの間にあるのは、たぶん、いちばん地味で、いちばん確かな信頼です。

