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少し前に「SM初心者セットは『全部入り』を買わなくていい――3点セットを2つ選んだ話」を書きました。
あれは買う前の話です。フルセットを見送って、首輪・手枷・目隠しの3点に絞って、タイプ違いで2つ選んだ。
そういう買い物の判断を書きました。
今日はその続編で、買ったあとの話を書きます。
何度か使ってみて、「3点セットってどう使うのがちょうどいいんだろう」が、少しずつ見えてきたので。
買う前に読むと「選び方」、買ったあとに読むと「使い方」――そんなふうに棚を分けてもらえると嬉しいです。
最初の夜は、目隠しを箱に残した
3点セットを買って、最初に使った夜のことは「首輪をつけた夜」に書きました。
あの夜、僕らは3点全部を一度に使ったわけではありません。
実際に手をつけたのは、首輪と手枷の2つだけでした。
目隠しはまだ箱に残したまま。
これは意図したというより、結果的にそうなりました。
初めて首輪をつける時って、それだけでけっこう、いろいろなものが動くんです。
彼女の表情、自分の手の置き方、二人のあいだの空気――そういうものを観察する余裕を残しておきたかった。
目隠しまで足すと、たぶん情報量が多すぎたと思います。
これは、後から振り返って思ったことでもあります。
入門セットだからといって、最初から全部を使う必要はない。
セットになっているのは「揃えやすい」というだけの話で、夜ごとの組み合わせは自分たちで決めていい。
最小構成から始めて、慣れたら一つずつ足していく――そのほうが、それぞれの効きどころがよく分かりました。
目隠しを足した夜は、別物だった
二回目か三回目の夜だったと思います。
首輪と手枷をつけたあと、ふと「目隠しもつけてみる?」と言って、足してみました。
これが、思っていた以上に別物でした。
首輪と手枷だけの時は、彼女がこちらを見ている。
視線が通っていて、ふたりの間に「ちゃんとお互いの存在を確かめている」感覚がある。
そこに目隠しを足した瞬間、その視線が消える。
代わりに、彼女が音や触れる場所に全集中しているのが、はっきり分かるようになるんです。
詳しい使い方は「目隠しプレイの効果と使い方」に書いたのでここでは繰り返しません。
ただひとつ言えるのは、目隠しは「足すべき夜」と「足さなくていい夜」がある、ということ。
いつも全部使うのが正解ではない。今夜は何を主役にしたいか、で選ぶ。
3点セットを買ってよかったのは、こうやって選べる手札として持てたことでした。
2タイプ持っていて、よかった
買う時に、本格寄り(A)と可愛い寄り(B)の2タイプを揃えました。
これが、使い始めてからもじわじわ効いてきた買い物でした。
その日の気分や、夜の流れによって、使うほうを選べるんです。
- 落ち着いた夜・少し本気で「役割の時間」を作りたい時 → A(本格寄り)
- 軽い気分で、衣装の延長みたいに楽しみたい時 → B(可愛い寄り)
同じ行為をしていても、つけている道具が違うとこちらの言葉づかいも変わるんです。
Aをつけた夜は、自然と僕の声がいつもより低くなる。
Bをつけた夜は、もう少し軽口が増える。
道具が、その夜のトーンを決めてくれる。
これは、1タイプだけ持っていたら気づかなかったことでした。
ちなみに、Aの首輪とBの手枷、というふうにミックスして使う夜もあります。
Aの威圧感は欲しいけど、手首はBのやわらかい肌当たりがいい――そんな組み合わせ方ができるのも、2つあるからこそでした。
つける順、外す順――小さな儀式になっていった
これは買う前には想像していなかったことなんですが、何度か繰り返すうちに、つける順番と外す順番が、自然に決まってきました。
僕らの場合は、つけるのは首輪→手枷→(必要なら)目隠しの順。
外すのは逆で、目隠し→手枷→首輪の順。
首輪を最初につけて、最後に外す。
これは決めたわけじゃなく、何回か繰り返すうちに「これが落ち着くね」となっただけ。
でも、この順番が役割の時間の出入り口になっていきました。
首輪が入る音、手枷の留め具の音、目隠しがふっと視界を覆う瞬間――順に重ねていくと、今は二人で違うモードに入っていくという意識が、ゆっくり立ち上がってくる。
終わったあとも同じで、目隠しを外して目が合い、手枷を解いて手の自由が戻り、最後に首輪を外していつもの僕らに戻る。
この「最後に外す」儀式があるおかげで、終わりの境目がはっきりします。
深く入った夜ほど、終わりの境目が曖昧だとサブドロップ・ドムドロップが来やすいとも言われていて、境目をはっきりさせることは、その手前の小さな備えのひとつになるかもしれません。
もちろん、いちばん大事なのは終わったあとの時間そのもの(アフターケア)です。それは大前提として。
道具がそこにある、という存在感
これは少し別の話なんですが、3点セットを家に置いておくと、使っていない時にも何かを連れてきます。
たとえば、引き出しを開けた時にふと目に入る。
夜、別の用事で寝室の収納を開けた時に、視界の端に映る。
それだけで、ほんの一瞬「あの夜のこと」を思い出すんです。
これは、いい時とそうでない時があります。
良かったのは、会話の取っ掛かりになること。
特に「次はどう使ってみる?」みたいな話が、自然に出やすくなりました。
道具があると、ふたりの夜について話すことが、ぐっと気軽になる。
逆に、配慮が要ると感じたのは収納の場所でした。
あんまり目に入る場所に置いておくと、相手をプレッシャーに感じさせることがあります。
「いつ使うの?」が無言の問いかけになってしまう。
僕らは、目につく場所には置かず、寝室の引き出しの奥にまとめてしまうようにしました。
出すのは使う夜だけ。これで、お互いに「今夜は使おう」と思った時にだけ、その存在を意識する形になりました。
これは「首輪の意味」にも通じる話で、道具は出した瞬間に何かが始まる。
だから、しまっておく時間も大事です。
手入れと衛生――合成皮革は意外と気が楽
3点セットの多くは、合成皮革でできています。本革ではありません。
これが、初心者には意外と気が楽でした。
本革は手入れが必要で、定期的に専用のクリームを塗ったりしないと、ひび割れたり乾燥したりします。
合成皮革は、そういう保湿は基本的に要りません。
ただ、ひとつだけ大事にしているのは、肌に触れた面の汗を、その日のうちに拭くこと。
首輪の内側・手枷の内側・目隠しの肌当たり――この部分は、汗や皮脂が残ったまましまうと、表面が傷んだりべたついたりしやすい素材です。
ここだけは欠かさず。
外側は乾いた布でさっと拭く程度で十分です。
湿気っぽい場所に長く置かない、というのも合成皮革を長持ちさせる地味なコツです。
「本物の革のような味は出ない」のは確かにそうです。
ただ、最初の入門用としては、手入れの手間がないほうが続けやすい。
将来「これは長く使いたい」という一品を選ぶ時に、本革を検討する、くらいの順番でちょうどよかったです。
使い続けても、壊れていない
最後にひとつ、これは買う前に心配していたことの答え合わせです。
「全部入りを買わなかった話」の時に、ハトメ(穴のふちの金具)の話を書きました。
安物はハトメがついていないものがあって、引っ張ると穴が広がる――そんな話です。
僕らが選んだ2つは、両方ともハトメ付きでした。
ここまで使ってきて、結論から言うと両方とも、まだ壊れていません。
特に可愛い寄り(B)は、買った時の値段がかなり安かったので、正直「すぐ駄目になるかも」と思っていました。
でも、しっかりした使い方をしていれば、入門用としては十分長持ちする、というのが今のところの実感です。
これは安物を礼賛しているわけではなくて、最初は安いもので十分試せる、という意味で書いています。
気に入って続いていけば、その時に「本格的な一品」を足していけばいい。
最初から高い物を覚悟する必要はありません。
安全に使うための、最低限のおさらい
使い方の記事なので、安全のところはあらためて短くまとめておきます。
詳しくは「全部入りを買わなかった話」の最後にもまとめました。
- 首輪はゆとりを残す――指1〜2本入る余裕を首と首輪のあいだに残す。首を圧迫する道具ではありません
- 手枷もきつくしすぎない――手首と拘束具のあいだに指1本。手先が冷たくなったり、しびれたりしたら即解く
- 目隠しのあいだは目を離さず、声をかけ続ける――視覚を奪っている分、相手にとってはこちらの声が唯一の現在地。沈黙が長いと没入が不安に変わります(詳しくは目隠しプレイの効果と使い方)
- やめる合図を先に決める――道具を使う前にセーフワードを。声が出しにくい体勢になるなら、握ったものを落とすなど非言語の合図も
- 解けなくなった時の備え――留め具が固まる・トラブルが起きた時のために、先の丸い安全ハサミを手の届くところに
- 使う前と片付ける時に金具をチェック――留め具・ハトメ・縫い目のほつれや金具のゆるみを、両方のタイミングで確認しておく
近い一品を選ぶなら――本格寄りと、可愛い寄り
これは僕らが実際に使った現物そのものではありません。使い続けてみて「あって良かった」と思える特長(金具つき・調整しやすい・肌当たり)を基準に、調べて選んだ近い一品です。「全部入りを買わなかった話」で紹介したものと同じです。
本格寄り(A)――しっかりした作りで、Aの夜(落ち着いた・本気の役割の時間)に合うタイプ。
SM入門セット(ブラック)可愛い寄り(B)――サテンに繊細なレースを重ねた、上品で親しみやすいタイプ。Bの夜(軽い気分・衣装の延長)に合います。
レースの可愛いSM入門セット(白)買う時のチェック点(ハトメ・金具のつくり)は「全部入りを買わなかった話」の本文に書きました。
まとめ
使い続けてみて、いちばん思うのは「3点セットは”最小構成”として優秀」ということです。
- 全部を一度に使わなくていい。最初は首輪と手枷だけでも十分。慣れたら目隠しを足す
- 2タイプ持っていると、夜のトーンを選べる。本格寄り(A)と可愛い寄り(B)――同じ行為でも、つけている道具で空気が変わる
- つける順/外す順が儀式になる。首輪→手枷→目隠しでスイッチが入り、逆順で日常に戻る
- 収納も含めて道具。目に入る場所に置きすぎない。出す夜だけ出す
- 合成皮革は手入れが楽。乾いた布で拭くだけで十分長持ちする
- 入門用でも壊れない。最初から高い物を覚悟する必要はない
箇条書きで並べると当たり前に見えますが、実際は、何度か繰り返して使い込まないと体感として分からなかったことばかりです。
もし3点セットを買ったばかりなら、ぜひ目隠しを箱に残したまま、首輪と手枷だけの夜から始めてみてください。
一つずつ足していく順番を、自分たちで決めていく時間そのものが、たぶんいちばん面白い時間です。
買う時の判断は「全部入りを買わなかった話」に、はじめての夜のことは「首輪をつけた夜」に、つけたあと家を歩いた話は「リードを引いて、家を歩いた夜」に書きました。
買い物の全体像は「ふたりの最初の一式」にまとめてあります。
どこから読んでもらってもいいので、今のふたりに合うところから。

