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SM・ボンデージを始めようと通販を開くと、まず目に入るのが「初心者向けフルセット」です。
首輪、リード、手枷、足枷、目隠し、ムチ、ギャグボール、乳首クリップ、くすぐりの羽……
これでもかと詰め込まれて、しかも安い。「全部そろう」という言葉は、たしかに魅力的に見えます。
でも僕は、結局これを買いませんでした。
そして、首輪・手枷・目隠しくらいの「ちょうどいい3点セット」を、タイプ違いで2つ選びました。
この記事は、なぜ全部入りをやめたのか、どう2つを選んで、何がよかったのか——という実体験の話です。
買い物の全体像は「はじめてのグッズ、どこで何を買う?」と「ふたりの最初の一式」に書いたので、ここは「セット選びの中身」だと思ってください。
なぜ「全部入りフルセット」を買わなかったのか
魅力的に見えたフルセットを、僕が見送った理由は3つあります。
① 点数の割に安すぎる=品質と安全が不安
10点で数千円、みたいなセットは、1点あたりに換算すると驚くほど安い。
でもその安さは、たいてい素材の触り心地や耐久性に出ます。
安物は肌当たりが悪かったり、使っているうちに壊れたり——拘束具がプレイの途中で壊れるのは、興ざめなだけでなく怪我のもとでもあります。
逆に、品質のいい高級フルセットは、今度は値段が高すぎて、最初の一歩には重い。「ちょうどいい」がなかなか無いんです。
② 今のふたりに要らない「過激な物」まで付いてくる
ここが僕にとって、いちばん大きかった。
全部入りには、ギャグボールのようなかなりハードな道具まで入っていることが多い。
でも、始めたばかりのふたりに、それは要りません。
そして道具は、持っているだけで相手を不安にさせることがある。
引き出しを開けた相手が「これ、何に使うの……?」と引いてしまったら、本末転倒です。
自分たちの段階に合わない物を、家に置かない。
それも、相手への配慮であり、信頼を守る選び方だと思っています。
③ 1つずつ買うと、今度はコストがかさむ
じゃあ単品で良い物を、と思っても、ひとつずつ買い揃えると結局それなりの金額になるし、使わずに眠る物も出てきます。
——この3つを天秤にかけて行き着いたのが、「必要十分な点数の、ちょうどいいライン」。
それが、首輪・手枷・目隠しがついた3点セットでした。
なぜ「首輪・手枷・目隠し」の3点が入門にちょうどいいのか
この3点は、「委ねる」を体験する道具が、過不足なくそろう組み合わせです。
- 目隠し=視覚を委ねる。拘束より心理的ハードルが低い、いちばんやさしい入口(選び方は「目隠しプレイの効果と使い方」に)
- 手枷=「委ねる」を初めて形にする道具
- 首輪(とリード)=所有や絆の象徴。つけ外しの儀式そのものに意味がある(僕らにとって首輪が何だったかは「首輪が持つ意味」に書きました)
ひとつだけ補足させてください。
首輪は、急いで使わなくていい道具です。
セットに入っているからといって、最初の夜から着ける必要はありません。
所有や絆を形にするものなので、ふたりの関係が育ってからのほうが、意味がちゃんと乗ります。
単品で順番に揃えていくなら首輪は後回しでいい、というのが僕らの結論で、その順番は「ふたりの最初の一式」に書きました。
セットは「まとめて手に入る」という別の合理性で選ぶもの、と思ってもらうのがいいと思います。
ハードすぎる物は入っていないけれど、入口の遊びはちゃんと作れる。
「過激ではないが、物足りなくもない」——この線が、セットを選ぶならちょうどいいんです。
タイプ違いで2つ買った――本格寄りと、可愛い寄り
同じ3点セットでも、雰囲気がまるで違う2タイプがあって、僕は両方買いました。
タイプA:本格寄り(しっかりした厚めの革・ハードな雰囲気)
最初に見つけたのがこちら。革がしっかりしていて、つけるとずっしりした存在感がある。「ちゃんとした道具を扱っている」という没入感が出る、D/sの空気を演出したいふたり向けのベーシックです。
タイプB:可愛い寄り(薄く細い革+フリフリのレース・最廉価)
もう一つ見つけたのが、同じ3点セットでかなり安いもの。
革は細く薄くて、正直単体の頑丈さは頼りない。でもフリフリのレースがついていて肌当たりも悪くなく、本格ボンデージというよりコスプレ・パーティーグッズ感覚。
これなら彼女にも「コスプレみたいなものだよ」と勧めやすいと思って、Aと一緒に買いました。
彼女が選んだのは、可愛いほうだった
両方を彼女に見せて、「どっちがいい?」と選んでもらいました。
選んだのは——安いほうの、フリフリのついた可愛いほうでした。
これは、とても良かったと思っています。
ひとつは、選んでもらうこと自体に意味があるから。
道具は支配の小道具である前に、ふたりの合意の象徴です。
一方的に渡すより、相手に選ばせるほうが、ずっと前向きに受け取ってもらえる。
これはD/sの考え方そのものでした。
もうひとつは、見た目が可愛いと、抵抗なく受け入れられるから。
いきなり威圧的な本格ギアを差し出されるより、「可愛い衣装」の延長で身につけられるほうが、最初の心理的ハードルはぐっと下がる。
入口は、可愛さでいいんです。
安物の見分け方――「ハトメ」を見る
ここで、ひとつだけ実用的なこだわりを。
革の留め具には、ピンを通す穴があります。
このとき、革にただ穴を開けただけの物と、穴のふちに金具(ハトメ)が打ってある物があります。
僕はハトメ付きを選びました。
というのも、ただ開けただけの穴は、引っぱる力がかかると広がったり、破れたりしやすい。拘束具は引っぱることもある。
なので、ここが弱いと寿命も安全性も落ちます。これは正解でした。
ただ正直に言うと、お試しで試す程度なら、そこまで神経質にならなくていい。
でも、将来「長く使える物」「特別な一つ」を買おうというときは、こういう細部に気を配ると失敗しません。
安物と良い物の差は、たいていこういう見えにくいところに出ます。
「金具つき」を選ぶと、拡張していける
もう一つの地味なこだわりが、首輪や手枷に接続用の金具(Dカン・リング)がついている物を選んだこと。
これがあると、つなげて組み合わせられる。
両手をつなぐ、手と足をつなぐ、首輪と手をつなぐ——組み合わせ次第で、いろいろな体勢をとってもらえます。
自由を奪うことそのものが、委ねたい側(サブミッシブ)の願いを満たすことにもなる。
そしてシンプルな道具は、将来むだになりません。
あとから新しいアイテムを足しても組み合わせて使えるし、その日の気分やプレイ内容で使い分けられる。
実際、買った2つのセットを組み合わせて使ったり、ふたりで付け合ったり——という遊び方もできました。
だから「安いお試し」で終わらず、もっと本格的な物をそろえていく足がかりになった。
これは、買ってよかったと心から思っています。
安全に使うための、最低限のこと
3点セットは入門向けとはいえ、人の体を拘束し、感覚を奪う道具です。最低限ここだけは。
- 拘束はきつくしすぎない——手首と拘束具のあいだに指が1本入る余裕を残す。手先が冷たい・白い・しびれるようなら、すぐ解く
- 目を離さない——目隠しや拘束のあいだは相手から目を離さない。いつでも切れるよう、先の丸い安全ハサミを手の届くところに
- 首輪は「締める」道具ではない——首輪は象徴。首を圧迫する使い方はしない。リードはそっと引く
- 留め具・金具を確認する——使う前にハトメや金具のほつれ・ゆるみをチェック。安物ほどここが壊れやすい
- 始める前に合図を決める——道具を使う前に、やめたい合図(セーフワード)を決める。声を出しにくいときのために、「握ったタオルを落とす」など言葉以外の合図も
- 衛生——肌に触れる道具です。使ったあとは素材に合った手入れを。摩擦が気になるなら、肌当たりのやわらかい潤滑も助けに(「潤滑ジェルとローションの違い」)
終わったあとは必ず互いをケアすること。拘束を解いて終わり、ではありません(「アフターケアの教科書」)。
近いものを選ぶなら――本格寄りと、可愛い寄り
これは僕らが使った現物そのものではありません。使ってよかった3点セットの特長(金具つき・調整できる・肌当たり)を基準に、調べて選んだ近い一品です。
本文で書いた「本格寄り(A)」「可愛い寄り(B)」に近いのは、それぞれこのあたりです。
どちらが上ということはないので、両方を見せて、相手に選んでもらうのがいちばんのおすすめです。
本格寄り(A)――しっかりした作りで、金具で拡張・組み合わせもしやすいタイプ。
SM入門セット(ブラック)可愛い寄り(B)――サテンに繊細なレースを重ねた、上品で親しみやすい見た目。アイマスク・首輪・カフスの3点で、「こわくない入口」として最初の一歩にしやすいタイプ。
レースの可愛いSM入門セット(白)選ぶときは、本文で書いたハトメ(穴の金具)や金具のつくりもチェックしてみてください。長く使うほど、そこの差が効いてきます。
まとめ
- 「全部入りフルセット」は買わなくていい。点数の割に安すぎる=品質/安全が不安/過激な物まで付いてくる=今のふたりに不要で、相手を不安にさせることも
- 単品買いはコストがかさむ。ちょうどいいラインが「首輪・手枷・目隠しの3点セット」
- 同じ3点でも本格寄り(A)と可愛い寄り(B)がある。両方見せて相手に選んでもらうと、前向きに受け取ってもらえる(可愛さは立派な入口)
- 安物の見分け方=ハトメ(穴の金具)。お試しなら不問、長く使う物では効く
- 金具つきを選ぶと、つなげて拡張・組み合わせできて、むだにならない
- 入門向けでも安全は別腹:指1本の余裕・目を離さない・首輪は締めない・金具の確認・合図を先に決める
いきなりハードな全部入りを、コストをかけて一気にそろえる必要はありません。
相手をドン引きさせず、自分たちの段階に合った物を、ちょうどよく。
その選び方そのものが、ふたりの信頼を一つずつ積む時間になります。

