「ちゃんと話し合ってから」——SMやD/sの解説には必ずこう書いてあります。
僕らのサイトでも繰り返し書いてきました。
でも正直、思いませんか。「話し合うって、具体的に何を?」
今日はその答えです。
世界のBDSMコミュニティで何十年も使われてきた、シンプルで強力なフレームを紹介します。Yes・No・Maybeの「3つのリスト」です。
なぜ「プレイの前」に話すのか
先に理由から。
盛り上がってる最中に確認すればいいじゃないか、と思うかもしれません。
それが危ないんです。
興奮の中では、ふたりとも判断が甘くなります。
受け手は深く没入するほど限界が分からなくなり、攻め手は高揚で読み違える。興奮時の「いいよ」は、冷静な時の「いいよ」と同じ重さではない。
だから枠は、冷静な時に決めておく。
プレイ中は、その枠の中で安心して我を忘れる。
話し合いは興奮の敵ではなくて、思い切り興奮するための土台です。
3つのリストの作り方
やることはシンプル。
ふたりそれぞれが、プレイの要素を3つに仕分けるだけです。
とはいえ「プレイの要素」では範囲が広すぎるので、軸を挙げておきます。
- 行為:何をするか、されるか
- 言葉:どう呼ばれるか、何を言われるか
- 道具:使うのか、素手や直接がいいのか
- 強度:同じ行為でも、どこまでなら
- 役割:どちらが主導するか。固定するのか、入れ替えるのか
- 場所と時間:どこで、どのタイミングなら
多くの人は行為だけを思い浮かべます。
でも、うちで実際に地雷になったのは言葉のほうでした。
🟢 Yes(やりたい・好き)
すでに好きなこと、もっとしてほしいこと。
例:叩かれるのが好き、強くされたい、命令されたい——なんでも。
🔴 No(絶対イヤ=ハードリミット)
何があっても踏み込まれたくない領域。
ここで大事なのは、行為だけでなく「言葉」も含めること。
たとえば僕の彼女のNoは、特定の行為よりも「人格や能力を否定する言葉」でした。
プレイの中の軽い叱りはスパイスでも、「ダメな子」「なんでできないの」は地雷——この線引きは、聞かなければ絶対に分かりませんでした。
この「絶対に動かない線」と「条件つきなら動く線」の違いそのものは、ハードリミットとソフトリミットのほうで詳しく扱っています。
🟡 Maybe(条件つき・興味はある)
「やってみたいけど不安」「気分次第ならアリ」の領域。
実はここがいちばんの宝箱です。
ふたりの世界がこれから広がっていく方向が、全部ここに書いてあるから。
聞き方のコツ——尋問にしない
リストと言っても、紙を挟んで面談する必要はありません。
僕らの実感では、コツは4つ。
- 興奮していない時に、軽く——お茶のとき、寝る前のだらだらした時間。「真剣な話があります」じゃなく雑談のトーンで
- ポジティブから入る——「この前のあれ、良かった?」「今度こうしてみたいんだけど、どう?」。過去の良かった話は答えやすい
- 数字で聞く——「あれって10点満点で何点だった?」は、言葉にしにくい感想を引き出す魔法の聞き方
- 小出しでいい——一晩で完成させるものではなく、少しずつ更新していく生きたリスト
いちばん大事なこと——「No」を歓迎する
このリストづくりには、技術よりずっと大事な心構えがひとつあります。
相手のNoが出てきたら、喜んでください。 大げさでなく、「言ってくれてありがとう」の場面です。
Noを言って嫌な顔をされた人は、二度と本音を言いません。
そして本音が言えない関係では、Yesも本物かどうか分からなくなる。
逆に、Noが安全に言える関係でだけ、Yesは深くなります。
「この人は私のNoを守ってくれる」という実績が積み上がるほど、相手はより大胆に委ねられるようになる。
リストの目的は、相手の限界を知ることじゃありません。「あなたの限界を大切にする」と行動で示すことです。
僕らは、このリストを作っていない
うちには、紙に書いたリストがありません。
一度も作ったことがないんです。
きちんと形にしている人はいると思いますし、それは十分にありだと思います。
ただ、うちはそこまできっちりしていなくて、曖昧なまま残っている部分もかなりあります。
では何もしていないのかというと、そうでもなくて。
新しいことを試したくなったとき、その場の雰囲気で言い出せる。
話の流れで「今度これ、やってみようか」と出てくる。
そういうやり取りが、けっこうな頻度であります。
つまり、リストが果たすはずの役割を、日常の会話が先に果たしている状態です。
ここで気づいたことがあります。
3つのリストの目的は、リストを完成させることではありません。
言えるようにすることです。
書き出す作業は、そのための足場なんだと思います。
だから、すでに言い出せる関係なら、形はなくてもいいのかもしれない。
逆に言えば、言い出せないなら足場が要る。そして、たぶんそちらのほうが多数派です。
「何をどこまでOKにするか」を口に出すのは、それ自体がかなり気恥ずかしい作業なので。
ただし、この判定はとても間違えやすい
ひとつだけ、危ない勘違いがあります。
「うちは言えているからリストは要らない」——この判定は、言えている側からは正しく見えません。
自分が言い出せているだけで、相手も言い出せているとは限らない。
主導する側は特にそうです。
提案する側に立っていると、相手が断りにくくなっていることに気づけません。
判定の材料は、ひとつだけだと思っています。
相手のNoが、実際に出てきたことがあるか。
一度も出てきていないなら、それは「Noがない関係」ではなく「Noを言えない関係」かもしれません。
その場合は、やはり足場を作ったほうがいい。
紙でも、メモアプリでも、話し合っておくことの工程を上からたどる形でも構いません。
一度のOKは、永遠のOKじゃない
最後にひとつ。
リストは固定ではありません。
体調、生理周期、仕事の疲れ——同じ行為でも、OKな日とそうでない日があります。
もうひとつ、3つの枠に収まらないものがあります。
「やめたわけじゃないけれど、しばらくやっていない」というやつです。
僕らにも、なんとなく使わなくなった道具や、前はやっていたのに最近ご無沙汰なことがあります。
話し合って「これはもうやめよう」と決めたわけではありません。
飽きたのかもしれないし、別の新しいことを始めて、そちらに移っただけかもしれない。
でも「二度とやらない」とも思っていなくて、また今度やってもいいね、くらいの温度で置いてあります。
これはYesでもNoでもMaybeでもない。休んでいる状態です。
3つに仕分けると、どうしてもこぼれます。
だからリストは、写真ではなく動画の一コマなんだと思います。
今日の並びが、半年後も同じとは限りません。
だから、プレイのたびに軽いチェックインを。
「今日はどんな気分?」のひと言でいい。
そして当日の急ブレーキ用にセーフワード(ふたりの合図)。事前のリスト+当日のチェックイン+最中の合図——この三段構えが揃うと、合意は「儀式」から「ふたりを守る生きた仕組み」になります。
まとめ
- 話し合う中身は Yes(好き)・No(絶対イヤ)・Maybe(興味あり)の3つのリスト
- 枠は冷静な時に決める。話し合いは、安心して我を忘れるための土台
- Noには行為だけでなく言葉の地雷も含める
- Noを歓迎する関係だけが、深いYesを手に入れる
- リストの目的は、完成させることではなく「言えるようにすること」。すでに言えているなら形はなくてもいい
– ⚠️ただしその判定は間違えやすい。基準は相手のNoが実際に出てきたことがあるか
- Yes・No・Maybeのどれでもない「休んでいる」状態がある。リストは写真でなく動画の一コマ
- リストは生きもの。チェックインと合図とセットで回す
ふたりの「Maybe」に何が入っているか——それを知る夜は、たぶん想像よりずっと楽しいですよ。

