D/sとS/Mは別もの――BDSMを「いくつもの軸」で読み解く

「ドミナント」と「サディスト」。
なんとなく、同じような意味で使われがちです。
攻める側、強い側、こわい側——みたいに、ひとまとめに。

でも実は、この二つは別の物差しの言葉です。
ここがほどけると、BDSMの地図が一気に見やすくなる。
今日は、「BDSMはいくつもの軸でできている」という話をします。

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ひとつの物差しで測れない

BDSMという言葉は、いくつもの要素が重なってできた言葉です。
頭文字をたどると、B=ボンデージ(拘束)/D=ディシプリン(規律・しつけ)/S=サディズム(刺激を与える)/M=マゾヒズム(刺激を受ける)
さらに、D/s=ドミナント/サブミッシブ(主導権)も重ねて読みます。
これを一列に並べて「どれか一つ」を選ぼうとすると、かえってこんがらがる。
もっと実用的なのは、性質のちがう”軸”に分けて、それぞれで眺めることです。

とくに中心になるのは、次の二つの軸です。

① 主導権の軸(D/s=ドミナント/サブミッシブ)
誰がコントロールを握るか、という軸。
主導権を渡す・受け取る、という関係の話で、痛みや道具は必ずしも関係ありません。

② 感覚の軸(S/M=サディスト/マゾヒスト)
強い刺激を与えるのが好きか、受けるのが好きか、という軸。
こちらは「痛み・感覚」の授受の話で、誰が主導権を持つかとは、本来別の問題です。

このほかにも、拘束(B)が好きか規律やルール(D)に従う/課すのが好きか、奉仕したいか・されたいか——軸はいくつもあります。
さっきの頭文字(B・D・S・M)も、結局はこの「軸」のいくつかを並べたものなんです。
そして大事なのは、それぞれの軸が独立しているということ。全体をひとつの地図として見渡したい方はこちら

だから「ドミナントだけど痛みは与えたくない」が成り立つ

軸が独立している、とはどういうことか。
具体例がいちばんわかりやすい。

  • 主導権は握りたいけれど、痛めつけたくはない人——D(ドミナント)だけどS(サディスト)ではない。「命令して尽くさせる」「優しく導く」方向の支配です
  • 痛みや強い刺激は好きだけど、主導権は手放したくない人——M(マゾヒスト)だけどs(サブミッシブ)ではない。自分でコントロールしながら、感覚だけを味わう
  • 叩く技術はあるけれど、心は支配したくない人——その場の行為としては攻めても、関係としては対等

「ドミナント=サディスト=こわい人」とひとまとめにすると、こういう組み合わせが見えなくなります。
同じ「叩く」という行為でも、そこに流れている権力や意図はまるで違う
軸を分けて見ると、その違いがちゃんと言葉になります。

「その場の役割」と「関係の役割」も別の軸

もうひとつ、混乱しやすいところを。

英語圏では、トップ/ボトムという言い方があります。

  • トップ=その場面で行為を「する」側
  • ボトム=その場面で行為を「される」側

これは一時的な、行為レベルの役割です。
一方、ドミナント/サブミッシブは、もっと続いていく関係レベルの役割

だから、関係としてはサブ寄りな人が、今夜はトップ(する側)を引き受ける——そんなことも起こりえます。
関係の役割(ドム/サブ)と、その場の役割(トップ/ボトム)は、別々に動くからです。
役割を入れ替えられる関係があるのも、この二つが別の軸だからこそ、なんです。

軸で考えると、「自分探し」がラクになる

軸を分ける、いちばんの効用はこれだと思っています。

BDSMに興味を持つと、つい「自分はドミナント?サブミッシブ?」と、ひとつのラベルを探したくなる。
でも人は、そんなにきれいに一語で収まりません。
「主導権は握りたい、でも痛みは受けるのが好き」——そんな組み合わせは、ぜんぜん普通です。

だから、ひとつのラベルを探すより、軸ごとに「自分はどっち寄りかな」と眺めるほうが正確
そして、その目盛りは固定ではなく、相手や日によって動きます。
診断やテストは出発点。結果に自分を縛りつける必要はありません。

軸が分かると、相性も見えてくる

ふたりの相性を考えるときも、軸はとても便利です。

たとえば「主導権の軸では噛み合っているけど、感覚の軸はお互い控えめ」なら、痛みは軽めで主導権のやりとりを楽しむ形が合うかもしれない。
どのくらいの”濃さ”が心地いいかも、軸ごとに違っていい。

ひとつの物差しで「合う/合わない」を決めるより、軸ごとに重ね合わせるほうが、ふたりのちょうどいいが見つけやすい。

僕らの場合

実は僕も、最初は全部ひとまとめにしていました。
「支配する側=痛いこともする側」だと、なんとなく思っていた。

でも実際の僕は、主導権は握りたいけれど、相手を本気で痛めつけたいわけじゃない。
どちらかというと「優しくコントロールして、喜ばせたい」方向です。
これは、主導権の軸(握りたい)と感覚の軸(強く痛めつけたくはない)が、自分の中で別々に動いている、ということ。
軸という考え方を知って、ようやく自分の輪郭がはっきりしました。

まとめ

  • BDSMはひとつの物差しではなく、いくつもの軸でできている
  • 中心は 主導権の軸(D/s)感覚の軸(S/M)。この二つは独立している
  • だから「ドミナントだけど痛みは与えたくない」「マゾだけど主導権は手放さない」が普通に成り立つ
  • トップ/ボトム(その場の役割)ドム/サブ(関係の役割) も別の軸
  • ひとつのラベルを探すより、軸ごとに「どっち寄りか」を眺めるほうが正確。目盛りは動いていい

自分を一語に押し込めなくていい。
軸でゆるやかに眺めるほど、ふたりの「ちょうどいい」は見つけやすくなりますよ。

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