今日は、プレイの話ではありません。
ふたりで暮らす性の、いちばん土台にある問題――避妊の話です。
僕らはコンドームからピルに切り替えたのですが、伝えたいのは切り替えそのものより、そこに至るまでに何を確認して、何を分け合ったかのほうです。
避妊は、どんなカップルにも関わる話です。
SMやD/sに興味がある人もない人も、よかったら読んでみてください。
「破れるかも」が、頭から消えなかった
最初はもちろん、コンドームを使っていました。
コンドームは、正しく使えばとても優秀な避妊具です。
でも「正しく使えば」がくせ者で、現実には途中で外れたり破れたりという事故が、それなりに起きます。
僕の場合、これがわりと起きました。
サイズの相性も理由のひとつで、きちんと使っているつもりでも事故が続いた時期があったんです。
つらかったのは、避妊の失敗そのものよりも、「今、破けてないかな」という考えが行為の最中に頭をよぎることでした。
そうなると、もう集中できない。
最後までいけないこともありました。
避妊への不安が、行為そのものの質を静かに削っていたんです。
だから僕は、彼女に相談しました。
「ピルも考えてみない?」と。
大前提は、避妊の”方針”がそろっていたこと
切り替えの話ができたのは、ひとつ大きな前提があったからです。
僕らは付き合う前から、避妊についての方針が一致していました。
正直に書くと、僕らは「子どもは作らない」という考えが、たまたまふたりとも同じでした。
ただ、ここで大事なのは”子どもを作るかどうか”という中身そのものではありません。
今は持たない、いずれ何人ほしい、まだ分からない――どんな方針でもいい。
大事なのは、避妊について「どうしたいか」がふたりの言葉になっていて、そろっていることです。
これがそろっていないと、避妊はどうしても片方任せの曖昧なものになります。
「なんとなく」で続けて、事故が起きてから慌てる――いちばん避けたいのはそれです。
だから避妊の話は、避妊具をどうするかの前に、「僕らはどうしたいんだっけ」をすり合わせるところから始まります。
ちなみに、僕が「ピルも考えてみない?」と切り出したとき、彼女の返事は「いいよ」とあっさりでした。
ピルには避妊以外の面でも利点があると言われていて、彼女にとっても、マイナスばかりではなかったようです。
すんなり決まったのは、たぶん”どうしたいか”がもともとそろっていたから。
土台ができていれば、大きな決断ほど、案外すっと進むものなのかもしれません。
ピルにする前に、ふたりで検査を受けた
ピルは、正しく飲めば避妊効果が高い方法です。
コンドームのように毎回の装着や事故に左右されないぶん、避妊の不安は大きく減ります。
でもコンドームをやめるということは、もうひとつの役割――性感染症の予防――も同時に手放すということです。
ここは飛ばせませんでした。
だから僕らは、コンドームをやめる前に、お互い性感染症の検査を受けました。
「検査しよう」と言うのは、正直、勇気がいります。
相手を疑っているみたいに聞こえないか――そういう不安は、たしかにある。
でも、考えてみてください。
お互い、相手が初めての相手ではありませんでした。
過去の相手にも、そのまた過去の相手がいる。
自分に心当たりがなくても、無症状のまま感染が受け継がれている可能性は、誰にでもある。
これは誰が悪いという話ではなく、ただの確率の話です。
検査は、保健所(HIV・梅毒などを無料・匿名で受けられる。項目は自治体による)、クリニック、郵送キットなど、いくつか方法があります。
詳しい受け方は体液が関わるプレイの前提の記事に書いたので、ここでは僕らの選択だけ。
僕らは、ふたり分をまとめて取り寄せられる郵送キットにしました。
家で誰の目にも触れず、ふたり一緒にできたからです。
このとき意識したのは、手配の役は僕が引き受けようということでした。
ピルを飲むのは、これから先ずっと彼女になる。
だからせめてその手前の、検査を調べて取り寄せて送る作業は、僕がやろうと思ったんです。
ひとつだけ仕組みの注意を。
検査には「感染してから検出できるようになるまでの空白期間(ウィンドウ期)」があり、項目によって数週間〜3ヶ月ほど。
最後にリスクのあった時期から十分に間をおいて受けて、はじめて結果が意味を持ちます。
検査はリスクを大きく減らす手段であって、ゼロの証明ではない――そこは正直に。
結果は、お互い別々に受け取りました。
彼女が見せてくれたので、僕も見せました。
ただ、見せ合うことは信頼の表現ですが、必ずそうしなければいけないものではないと思っています。
本質は、見せるかどうかではなく、嘘をつかないこと。
そこに正解はなくて、ふたりが納得できる誠実さの形を選べばいい。
変わったのは「快感」より、心の落ち着きだった
ピルに切り替えて、何がいちばん変わったか。
「生のほうが気持ちいい」と言われがちですが、僕にとって大きかったのは、そこではありませんでした。
心配が消えて、落ち着いてできるようになったことです。
破れる不安が頭をよぎらないだけで、こんなに違うのかと思いました。
焦って終わらせる必要がない。
途中で一度休憩して、また再開することもできる。
つまり、相手をもっと大事にできるようになったんです。
余談ですが、不安から解放されたことで、僕の遅漏ぎみだったところも自然と落ち着きました。
性は、それくらい心の状態に左右されるんだと思います。
負担は彼女に偏る。だからこそ、できることを
ここは正直に書かないとフェアじゃありません。
ピルは、お金も、毎日飲む手間も、通院も、ほとんどが彼女の側にかかります。
僕は何も飲まなくていい。
この非対称を、なかったことにはできません。
だから僕は、できることを引き受けています。
- 病院代は彼女個人の負担にせず、ふたりの生活費から出す
- 婦人科の送り迎えをする(中で気まずければ、外で待つ)
- 飲む時間に、薬と水をさっと用意する
そしてもうひとつ、地味だけど大事にしていることがあります。
飲み忘れた日に、怒らないことです。
毎日飲んでくれているのは彼女で、人間だから忘れる日もある。
そこで責めてしまったら、負担の上に気まずさまで乗せることになります。
大事なのは、責めることではなく、正しくリカバリーすることです。
飲み忘れたときの対処は、忘れた錠数やタイミング、ピルの種類によって変わります。
気づいた時点ですぐ飲み、しばらく(製剤によりますが、数日〜1週間ほど)はコンドームを併用する――といった対応が基本ですが、正確な手順は必ず、添付文書や処方してくれた医師・薬剤師の指示に従ってください。
もし直近に避妊なしの行為があったなら、緊急避妊(アフターピル)という選択肢もあります。
いずれにしても、ひとりで抱え込ませず、一緒に対処する。
飲んでもらっている側として、それくらいの構えでいたいと思っています。
それと実用的な話を。
ピルはオンライン診療でも処方してもらえますが、最初は対面で受診するのがおすすめです。
体質や持病によって飲めない人もいるので、健康状態を確認しながら、合う・合わないを医師に診てもらう最初の一歩は、画面越しより安心。
慣れたら、ときどき対面で診てもらいつつオンラインも活用する――くらいがちょうどいいと思います。
これは、特別なカップルの話じゃない
最後にひとつ。
このサイトはSMやD/sを扱っていますが、この避妊と検査の話をしていた頃、僕らはまだごく普通のカップルでした。
特別な性癖の話なんて、まだ何もしていない。
「ピルにしようか」も「検査を受けよう」も、言い出すのに勇気がいる、センシティブな話題です。
それでも否定せず、馬鹿にせず、ちゃんと話し合える。
その土台があったから、僕らはこの選択ができました。
そしてこの土台は、のちにもっと深い話をしていくときにも、そのまま効いてきます。
言いにくい性の話こそ、信頼できる相手とは話してみていい。
性の話をオープンにできる関係づくりが、避妊もプレイも、すべての出発点になります。
まとめ
- コンドームは優秀。でも事故は現実に起きる。その不安が行為の質を削ることがある
- 避妊を選び直す出発点は、「どうしたいか」の方針がふたりでそろっていること(中身は人それぞれでいい)
- ピルでコンドームをやめるなら、やめる前にお互い検査を。検査にはウィンドウ期があり、ゼロの証明ではない
- ピルの負担は彼女側に偏る。お金・送り迎え・手配を分け合い、飲み忘れを責めない。最初の処方は対面受診がおすすめ
- 変わるのは快感より心の落ち着き。焦らず、相手を大事にできる
- これは特別な人の話ではない。言いにくい性の話を話し合える土台が、すべての出発点
避妊は、どちらか一方の問題ではありません。
ふたりで選んで、ふたりで引き受けるもの。
その話し合いそのものが、関係をひとつ強くしてくれます。

