アフターケアで検索すると、やることのリストはたくさん出てきます。
水分をとる、抱きしめる、体を拭く、言葉をかける。
でも実際にやってみると、リストだけでは足りないことに気づきます。
同じことをしても、タイミングが違うと届き方がまるで変わるからです。
終わった直後に「よかったよ」と声をかけても、相手の耳にはほとんど入っていない。
逆に、翌日のなんでもない一言が、驚くほど深く効くことがある。
アフターケアが「なぜ必要か」は「アフターケアの教科書」に書きました。
この記事はその先です。
何をするかではなく、いつ何をするか。段階で整理します。
アフターケアには段階がある
先に全体像を置きます。
大事なのは、この順番を飛ばせないということです。
段階1でやるべきことを飛ばして段階2の言葉から入ると、うまくいきません。
逆に段階1を丁寧にやれば、段階2は驚くほど楽になります。
段階0:終わる前――「どう終わるか」は始まる前に決まっている
アフターケアは、終わってから考えるものだと思われがちです。
でも実際には、始まる前にほとんど決まっています。
激しくするつもりの日なら、後で時間がかかることを見込んで、翌朝が早い日は避ける。
終わったあとに使うタオルや飲み物を、手の届くところに置いておく。
それだけで、直後にばたばたと席を立たずに済みます。
ここを準備しておかないと、いちばん密着していたい時間に「ちょっと待ってて」と離れることになる。
プレイ中の環境づくりについては「プレイ中の室温の話」にも書きましたが、終わったあとの環境も、始まる前の仕事です。
段階1:直後の10分――ここでは、言葉はまだ届かない
終わった直後、最初にやることは体のことだけです。
- 拘束やグッズを外して、体を自由にする
- きつかったところ、叩いたところをそっとさすって、状態を確かめる
- 毛布をかける、肌を寄せる。汗が引くときに体温は一気に下がります
- 水を一口。思っているより消耗しています
ここで多くの人がやりがちなのが、すぐに言葉をかけて安心させようとすることです。
気持ちは分かります。でも、深く入っていた相手ほど、この時間はまだ意識が戻りきっていません。
サブスペースから降りてくる途中の相手に、感想や確認の言葉を向けても、内容はほとんど残りません。
それどころか、返事をしなければという圧力になることがあります。
この10分は、黙っていていい時間です。
触れていること自体が、この段階のケアになります。
言葉が要るとすれば、短いものだけ。
「そのままでいいよ」「ここにいるよ」。
情報量のない言葉のほうが、この時間には合っています。
段階2:落ち着くまでの1時間――ここで初めて、言葉が効く
呼吸が落ち着いて、目の焦点が戻ってきたら、段階2です。
ここからが、言葉の出番になります。
- 肯定を渡す。「よかったよ」「ありがとう」「頑張ったね」。プレイ中に強い言葉を使ったなら、なおさら丁寧に
- 触れ続ける。抱きしめる、髪をなでる、背中をさする
- 激しかった日ほど、長く。強度とケアの量は比例すると思っておくと、まず外しません
段階1と段階2で言葉の扱いが逆になるのが、この時間軸のいちばん実用的なところだと思っています。
直後は黙る。落ち着いてから言葉を渡す。
順番を逆にすると、せっかくの言葉が空振りします。
もうひとつ。この段階では、感想戦を急がないほうがいいです。
「あれはどうだった?」「次はこうしてみる?」という話は、それ自体は良いものですが、まだ体が戻りきっていないうちに始めると、評価されている感じになってしまうことがある。
振り返りは、この夜の後半か、翌日でも遅くありません。
段階3:その夜――攻めた側にも、来るものがある
ここが、僕が実際にいちばん学んだ段階です。
激しくした日の夜、リードした側に「やりすぎたんじゃないか」「自分だけ気持ちよくなったんじゃないか」という気持ちが来ることがあります。
これはドムドロップと呼ばれる反応で、珍しいことではありません。
僕にもそういう夜がありました。
そのとき僕は、正直にそれを彼女に伝えて、謝りました。
返ってきたのは「いいよ」という短い言葉と、いつもと変わらない態度でした。
あとから考えると、あれは僕がケアされた時間でした。
アフターケアは自分が相手に渡すものだと思っていたので、受け取る側に回るとは思っていなかった。
だから、される側の人にも伝えたいことがあります。
「すごくよかった」と言葉を返すのは、立派なアフターケアです。
攻めた側は、その一言を思っているよりずっと必要としています。
ケアは一方通行ではありません。
渡し合って、はじめて両方が着地できます。
段階4:翌日――実は、ここが本番かもしれない
意外に思われるかもしれませんが、落ち込みは当日の夜ではなく翌日以降に来ることのほうが多いです。
理由は生理的なもので、詳しくは「サブドロップ・ドムドロップとは」に書きました。
翌日にやることは、派手である必要がまったくありません。
- 朝の「昨日は楽しかったね」のひと言
- いつもどおりの、何気ない優しさ
- いつもと様子が違えば、そっと気にかける
ポイントは、特別扱いしないことだと思っています。
「昨日は大丈夫だった?」と深刻に聞かれると、大丈夫じゃなかったことになってしまう場合がある。
渡したいのは心配ではなく、「昨日のことは、ちゃんと今日に続いているよ」という感覚です。
非日常のことを、日常が受け止めている。それが伝われば十分です。
僕らの場合、翌日に何か特別なことをした記憶はありません。
ただ、いつもどおりにしていました。
振り返ると、それがちょうどよかったのだと思います。
ここまで書いておいて、正直に言うと
僕らはまだ、はっきりそれと分かるドロップを経験していません。
だから「こうやって乗り越えました」という話は書けない。
書けるのは、来なかった側の話です。
来ていない理由が、ここまでの段階をなんとなくでも踏んできたからなのか、それともたまたまそういう体質なのかは、正直わかりません。
予防できたと言い切るには、比べる相手が少なすぎます。
それでも、ひとつだけ確かだと思っていることがあります。
来ないかもしれないものへの備えは、無駄になっていないということです。
翌日に「昨日は楽しかったね」と声をかけるのは、ドロップが来ても来なくてもやることだから。
備えのほうが要らなかったのなら、それがいちばんいい結果です。
段階5:数日後、そして次回の前――ケアは、次の合意に変わる
落ち込みは数日後に遅れて来ることもあります。
とはいえ、何日も見張っている必要はありません。
必要なのは、「遅れて来ることがある」と知っていることだけです。
知っていれば、数日後に相手が理由もなく沈んでいるとき、原因を関係のほうに探さずに済みます。
知らないと、「気持ちが冷めたのかもしれない」という一番いらない誤解が生まれます。
そして、次の機会の前。
ここで一度だけ、聞いておくといいことがあります。
「終わったあと、どうしてほしい?」
アフターケアの正解は人によってまるで違います。
たくさん抱きしめてほしい人、しばらく静かにしていたい人、甘いものが欲しい人、先にお風呂に入りたい人。
決めつけずに聞けば、それがそのままふたりの正解になります。
聞くタイミングとして、直後や翌日より次回の前をすすめたいのは、そのほうが答えやすいからです。
終わった直後は言語化できないし、翌日は蒸し返しになりやすい。
落ち着いた日の、次の話をしている流れでなら、確認は自然に収まります。
ただ、これも白状しておくと、僕はこれをまだ正面から聞けていません。
この記事を書きながら、次の機会にちゃんと聞いてみようと思っているところです。
これはセーフワードを決めるのと同じで、事前に交わしておく合意の一種です。
ケアの話をしているつもりが、いつのまにか次の約束になっている。
アフターケアが、次のプレイの安全につながっていくのはこの部分です。
段階で考えると、何が変わるか
やることのリストは、どこで読んでも似ています。
違いが出るのは、いつ、どの順番でやるかのほうでした。
- 直後に言葉をかけすぎない
- 落ち着いてから、たっぷり渡す
- 攻めた側のケアは、その夜に
- 翌日は特別扱いせず、いつもどおりに
- 聞くのは、次の機会の前
順番を取り違えると、せっかくのケアが届きません。
ありがちなのは、直後にたくさん話しかけて反応が薄く、そのまま手持ち無沙汰になってしまうパターンです。
やっていることは間違っていないのに、時間だけが噛み合っていない。
リストを覚えるより、この時間の流れを一度つかんでおくほうが、結局は楽だと思います。
まとめ
- アフターケアは何をするかより、いつするかで効き方が変わる
- 段階0:終わったあとの環境は、始まる前に用意しておく
- 段階1(直後10分):体のことだけ。言葉はまだ届かない
- 段階2(〜1時間):ここで初めて言葉が効く。激しかった日ほど長く
- 段階3(その夜):攻めた側にも来る。「よかった」と返すのもアフターケア
- 段階4(翌日):本番。特別扱いせず、いつもどおりの優しさを
- 段階5(数日後〜次回前):遅れて来ると知っておく。次の前に「どうしてほしい?」を聞く
飛ばしたら降ろすところまでがプレイだとよく言われます。
その降ろし方には、時間の順番があります。
順番さえ分かっていれば、特別な技術はいりません。

