言われてもいないのに――彼女が自分から、ひざまずいた夜

プレイ中の話です。
首輪をつけて、僕がいくつか「命令」を出して、彼女がそれに従う。
そういう、いつものD/sの時間でした。

でも、その夜は少し違いました。

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命じていないのに

僕が何も言っていないのに、彼女が自分から、床に深くひざまずいたんです。
頭を低くして、僕の足に、一本ずつ口づけていきました。

正直、僕は固まりました。
そんなこと、一度も命じたことはなかったから。
彼女は、嬉しそうでした。
誰かに強いられたのではなく、自分の意思で、そうしたがっていた。

「服従」という言葉が、急に生々しく、でも不思議ときれいに見えた瞬間でした。

強いるものじゃなくて、差し出されるもの

このとき僕が学んだのは、深い服従は「させる」ものじゃない、ということです。

命令して、無理やり従わせる。それもD/sの一つの形かもしれません。
でも彼女が見せてくれたのは、その逆でした。
自分から差し出される服従。
こちらが奪うのではなく、向こうが贈ってくれるもの。

そう気づいてから、僕の役割は少し変わりました。
「従わせる人」ではなく、「彼女が安心して差し出せる相手」でいること。
そのほうが、ずっと深いところまで一緒に行ける気がしたんです。

ちなみに、奉仕している側が必ずしも”下”とは限りません。
同じ行為でも、する人の立場で意味がまるで変わる――その話は「同じ行為なのに、真逆」に書きました。

「踏んでほしかった」

後日談があります。
その夜のことを振り返りながら、僕が冗談半分で「やりすぎかもって思ってやめたけど、踏んであげたくなったよ」と言ったんです。
そうしたら彼女が、ぽつりと。

「……踏んでほしかった。次は、絶対踏んでね」。

びっくりしました。
でも、それくらい彼女は、委ねることに喜びを感じる人なんだと、あらためて分かった。
こういう「もっと」を求められたとき、受け止める側がどう考えるかは、また別の話として書きます。

受け取る責任

自分から差し出してくれるものを、ちゃんと受け取る。
これは、想像していたよりずっと、責任のいることでした。

雑に扱えば、彼女の勇気を踏みにじることになる。
だから僕は、彼女がひざまずいてくれたときほど、丁寧でいたいと思う。
強くあることと、優しくあることは、たぶん矛盾しません。
それを、彼女が教えてくれました。

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